1.ウナギの未知のビリベルビン異性体そのものおよびジアゾ誘導体をHPLC分析にふし、その結果をヘミンより合成したビリルビンのそれらのHPLC分析結果と比較した。その結果、この未知のビリルビン異性体をビリルビンIXβと同定した。また。このビリルビン異性体のウナギ胆汁中の全ビリルビンに占める割合は30〜40%であり、哺乳類(3〜5%)に比べ高かった。ウナギはその血奬中に多量のビリベルジンを含むことを考えあわせると、そのヘム代謝は特異性を示すと考えられた。また、このビリルビンIXβはおそらく血球中で産生されるのではないかと考えられた。 2.黄疸発症ブリを入手し、その筋肉および肝臓中のTBA値および胆汁色素含量およびα-トコフェロ-ル含量を調べた。さらに、病魚の病理組織を調べた。その結果、肝臓および筋肉にビリルビンが蓄積していること、それらの組織は生体内脂質の過酸化が進行していることが、明らかになった。この結果は、黄疸症は生体内で急激な活性酸素が発生したことにより発症すること、またビリルビンは急激に発生した活性酸素を除去するために動員されたことを示唆している。 3.黄疸症ウナギについて、血奬中ビリルビン組成を血奬中胆汁色素分析用に、新たに開発したHPLCシステムにて分析した。さらに、肝臓の病理組織を光顕および電顕により調べるとともに、ビリルビンのモノクロ-ナル一抗体を用い、組織化学的に調べた。血奬中の抱合型ビリルビンが増加していた。また、肝臓には哺乳類の黄疸症に見られるような顕著な病変は認められなかった。これらの結果を、哺乳類の黄疸症の病理と比較検討した結果、本黄疸症は、ホルモンのバランスが失われたために発症したと考えられた。
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