数種魚類筋肉中に多量に存在するLーヒスチジン(His)あるいはHis関連ジペプチドのカルノシン(Car)、アンセリン(Ans)およびバレニン(Bal)の筋肉緩衝物質としての機能を明らかにする目的で、次のような検討を行なった。 1.市販の標品を用いて無機リン酸、His関連化合物6種、およびβーアラニン以外のアミノ酸からなるHis含有ジペプチド6種のpH6ー8における緩衝能を測定し、2ー40℃の範囲でこれらの緩衝能の温度依存性を検討した。無機リン酸、Car、Ansの緩衝能は極めて高く、その温度依存性は僅かであったが、His、BalおよびτーメチルHisの緩衝能は低く、温度依存性も大であった。一方、Ala・HisやSer・Hisの緩衝能はAnsと同じであり、必ずしもHis関連化合物が緩衝物質として最適とは言えないことがわかった。 2.上記の各化合物のpK値を測定し、温度依存性を調べた。無機リン酸のpK値は温度の影響を受けにくいが、その他の化合物のpKはいずれも温度の上昇につれて低下した。この低下はAns、Car、Balでは同程度であったが、HisやτーメチルHisでは40℃ではpKが6以下に低下した。また、HisがC末端側の方がpKが高いことがわかった。 3.HPLCによるHis関連化合物の分離定量においてこれまで0.1nmol程度であった感度を上げるために、PTCおよびFMOCでプレラベルしてODSカラムで分離する方法を種々検討した。しかし、感度は100倍に上昇するものの分離が不十分であった。そこで、従来用いていたSCXカラムにより分離後、OPAでポストラベルし、蛍光検出することにより、1pmolまで測定が可能になった。この方法により、数種の無脊椎動物筋肉にもCarやAnsが存在することが判明した。
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