問題の出発点として都市計画法制定過程にかさのぼって、今日の日本における土地の利用調整の具体的あり方である区域・区分制度の成立過程を調査分析した。日本の区域区分制度はその発想当初においては、フランスのそれに近似した、きめ細かな五区分制をとり、開発許可と農地転用を連動させつつ動態的な都市化に対応する戦略を有していたが、具体的な策定過程において農林当局が市街化区域の農地転用規制を外す方向に動いたことが理由となって、現行の二区分制に後退し、そのことが税制上の扱いと相まって、過大な農地を市街化区域にとりこみ、かつ市街化区域内農地の制度的位置づけをあいまいならしめ、今日のおける土地利用調整問題の混乱の一原因を成したことを明らかにした。 したがって、問題解決のためには市街化区域内農地の制度位置づけが必要であり、都市農業についても、市街化区域内の経過的農業として把握するのではなく、地方自治体によって都市計画のなかに積極的に位置づけられた計画的都市農業の観点が必要である。そのような観点から、横浜市の農業専用地区制度や大阪市の都市緑農区制度の実態調査を行った。いずれも区域指定にる面的な都市農業の確保を図ったユニークな制度であるが、行政投資の恒久性の担保等をめぐっては相違や問題点も指摘される。 さらの神奈川県厚木市を具体的事例として、都市計画線引き、農業振興地域および農用地区域の指定の実態とその今日的な帰結につい農家全戸調査を含む実態調査を行った。そこでは、これらの区域指定が地域住民や地権者の意思を十分に尊重することなく、行政の上からの一方的指定としてなされ、それが日本の実態として農用地の一定の面的確保を結果したともに、その恒久的維持についての脆弱性を残している二面性を明らかにし、権力的統制手法ではなく、説得と納得による区域区分の必要性を明らかにした。
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