前年度までに牛乳、豚肉、鶏肉、牛肉、本年度に鶏卵の生産・流通の段階別価格形成分析を行なう計画で、本年度は鶏卵を加えて5品目の総合的分析を行った。その概要を述べると次のとおりである。 (1) 鶏卵流通をみると近年、流通費が増大傾向にあるため、農家手取率が減少している。段階別にアメリカと比較すれば、日本は雛が62%、大雛費が65%、農家生産費が48%、GPコストは57%、卸売価格は84%小売価格は76%とアメリカが日本より安い。このことは種鶏は同じにもかかわらず、ふ卵規模差、大雛経営規模差、各段階のインテグレ-ションの度合によっている。生産者、小売価格倍率はアメリカで2.53であるが日本は1.6倍と低い。つまり流通効率はよいとみられる。 (2) 総合分析、生産者、小売価格倍率をみると牛肉はアメリカの3.7倍に対し日本は3.2倍、鶏卵も2.5に対し日本は1.6倍、豚肉は台湾で1.96倍であるのに対し、日本は1.54と低い。牛乳についても韓国の3.8倍に対し、日本で2.1倍と低く、流通効率はよいとみられる。流通費は多段階流通である品目ほど高く、距離によっても異なる。加えて、流通段階の進行にしたがって市場が多く、統合度(Integration ratio)が低いものほど流通費は高い。牛肉流通を例とすれば、価格形成の場は子牛(スモ-ル市場)素牛(市場)、成牛市場、枝肉市場、部分肉市場及び精肉と5〜6段階に分かれ、それぞれで市場価格形成がなされ、流通経費を高めている。 ブロイラ-の生産者・消費者価格倍率は日本で3.5倍であるのにタイでは1.45倍にすぎない。この要因は低労賃、低地価であることもあるがインテグレ-ションの進行・統合度が高く、S(Slaughtering).C(Cutting).F(Further processing)のSCFの統合度が高いことに基づく。 このように畜産物価格の国際比較は、生産費や流通費を別々にみるのでなく、各段階別に総合的考察が必要であることが明確となった。
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