本研究に使用した人工法面は、水平距離が15m、鉛直距離が7.5mの2割勾配を持っていて、大規模農地造成法面は農道含めて高さが約20mの約2.5割勾配の人工法面の一部である。法尻は約50cmの布団籠があり地山より5段積まれ、その背後に2.5mの高さに、その前面には2.0nの高さまで盛土を施工している。すると、地山法尻の布団籠部より湧水がみられ、布団籠の前面部は湿潤した場所となる。そのため、湿生植物(よし、がま、い、みずごけ)が繁茂している。このように法尻に出現した湿地帯の中で、盛土中央の法尻部はあまり湿潤してはいない。むしろ、谷部の左右端の切盛りの土の境からの湧水が多く観察された。これらを確かめるため、1m深地温測定による地下水探査の技術を適応し、地下水の流脈を探査した。 その結果、前述の、法尻が盛土と切土の境になるような場所では、湧水があり、せん断強度が低下し、法面崩壊する。また、谷底の中央部においては、盛土工事以前に湧水地帯であった場所で、このような地盤に沿って、盛土工事以前の地形による地下水脈が、工事後にも存在することが予想された。そして、法面に向かって左側面の法尻部が平成元年四月頃、小規模の法面崩壊の事故が発生している。事後の調査により、このような場所は法尻に盛土切土の壊となり、そして、地下水流脈がある場所であることが分かった。このように地温による地下水探査法は地下水流脈の探査方法としては有効な手段であると思われる。法尻が盛土と切土の境となり、そして、地下水流脈の存在が法面崩壊が起こる場所と直接には断じ難いが、かなり危険性の高い場所であると思われる。 このような、法尻崩壊の危険が予想される地点には布団籠を布設し、法尻からの地下水の速やかな排水と法の根固めの効果を期待することは、まさ土地帯の斜面防災上の基本的土技術と思われる。
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