本研究は、大規模畑地造成に伴う人工法面の安定に関する研究で、特に、降雨により法面崩壊が生じて困難な設計、施工と管理を強いられてきた、マサ土地域の大規模法面の安定に関して、行った研究である。研究を行った場所は、福島県郡山市郊外、阿武隈山地のマサ土地帯の農地造成地である。本造成地帯は、マサ土地山の山裾からの湧水を集め、水田灌漑水としていた農地で、このような地山を水田部に盛切り土することにより造成された大規模畑地地帯である。そのため、地山の湧水処理が適切に行われなかった場所では、法面崩壊の事故を招いている。本研究はこのような事故を未然に防ぐため盛切土内の雨水の浸透問題について次のように検討を加え、いくらかの知見を得たのでこれを以下に示す。 マサ土の性質:盛土部・切土部 自然含水比(%):14.89・8.25 湿潤密度(g/cm^3):1.918・1.735 乾燥密度(g/cm^3):1.508・1.606 透水係数(cm/sec):10^<-4>〜10^<-5>・10^<-3>〜10^<-4> マサ土の乱さない状態の切土では透水性が究めて良好である。法尻には水が集まり易いので、せん断抵抗力は大きいけれども、盛切り土の境が法尻にあるような場所でマサ土の法面崩壊は発生し易い。従来考え方のような、谷の中心部迄は、雨水の浸透は少ないので、盲暗渠の位置は谷裾部に張り巡らせる必要がり、盲暗渠の布設されている法尻部に布団籠を設置すると法面安定に効果的であることが分かった。
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