排水管理システムで核となる降雨流出モデルについて、従来開発を進めてきた分布貯留型モデルのパソコンへの移植を行い、近傍の一級河川である猪名川流域の表面流モデルを作成した。また、評価の困難な宅地化等土地利用変化の推定に衛星情報を活用するため、ランドサットデータによる土地利用判別を最尤法によって試み、同流域に適用して宅地、水田、林地、ゴルフ場、及び水域の自動判別を行った。小縮尺の地形図を基にした土地利用錯綜地区での推定精度は70%程度と低いが、重回帰式による判定など現在精度の向上を図っている。57mメッシュの土地利用判別ルーチンを排水モデルに組み込み、排水量変化との対応関係を検討するのが、次年度の課題である。 都市化に従って問題になる排水水質についても検討し、いくつかの知見を得た。野洲川流域での分布貯留型モデルを用いた水質指標の経時変化及び汚濁物質の流出機構のモデル化は次年度以降も進める予定である。また、神戸市内中小河川及び滋賀県日野川流域での既存水質指標を用いた計算結果では、汚濁排出の単位負荷特性を土地利用データの利用によってうまく表現できることを示した。衛星データのこの面での活用が期待できる。 排水管理の現状については、兵庫県及び滋賀県の関係地区で聞き取り調査を行い、用排水路の管理、水質面での現況を捉え、土地改良区レベル及び住民レベルで問題点を整理した。都市化進行地域での排水改良は緊急の課題であり、精度の高い排水予測と計画への適用による排水面からみた都市化コントロールが重要である。土地改良区での排水管理面ではパソコンの利用による経済的で安全な管理システムの開発が望まれる。その点で今回導入のPC98RAは従来用いたFシリーズと比べ優れており、衛星画像処理計算にも十分対応できることがわかった。
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