本研究では溜池地帯における圏場整備の地区事例を研究対象にして、池掛りの変容、換地選定、水利条件の評価を分析検討し、水利清算概念を明らかにした。すなわち、池掛りへ新しく一筆の土地が加入する時、整備前後における水利条件の評価に基づき、個人が水利団体に対して、水利条件差に見合う対価を支払う措置であると定義した。そこで、水利清算が成立する条件は、(1)池掛り区域を単位とする水利条件の評価をすること、(2)清算水象領域は水利団体の管轄する池掛り区域であること、(3)清算金のやりとりは、水利団体と個人の間で行われること、この三条件である。 さらに、この水利清算が換地清算とかみ合う条件は、(1)農業集落の属地領域に水掛り区域全域が含まれること、(2)集落の属地領域が全域にわたって圏場整備されること、(3)換地の土地評価において水利条件が水掛りを単位にして評価されること、(4)集落組織と一体化して水利統合が成立すること、の四条件である。これはきわめて限定されるので、水利統合をしないで、池掛りを復元し、池掛りを移動する換地選定がある場合には、水利清算を換地清算とは別に行う必要があることが判明した。 これらの研究過程で、水利条件の評価項目について、水路条件は一筆単位に評価されるべき必然があり、換地清算の基礎的評価項目であり、水量水件は池掛り区域を評価単位とする必要を有し、水利清算の基礎となる評価であることが明らかとなった。 本研究では、水利団体と個人との清算構造を明らかにしたが、次の課題は水掛り区域と水掛り区域、すなわち、水利発体と水利団体との清算構造を明らかにすることにある。
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