本年度は、CAセル(チャンバー)を試作し、このCAセルを用いて気体分離膜の基本特性を調べる実験を行った。また、この気体分離膜を組み込んだCA貯蔵システムを試作した。CAセルは内径298mm、長さ600mmの円筒型で気密構造になっている。気体分離膜として酸素富化膜を選択し、二酸化炭素、酸素の透過特性をとらえるための実験として、CAセル内の組成を調整した後濃度を測定し、気体分離膜にCAセル内の気体を供給してCAセル内の圧力と濃度の計測を行なった。圧力と濃度変化からこの分離膜がどの程度の気体を透過するかを求めた。この結果をもとに、この気体分離膜を用いたCA貯蔵システムを構成し、ガス交換実験を行なった。また、パーソナルコンピューターを用いてこのシステム全体の計測と制御の自動化を図った。ガス交換実験はCAセル内の過剰な二酸化炭素を除去する二酸化炭素排出操作と不足した酸素を補給する酸素導入操作を行なった。その結果、過剰な二酸化炭素を除去することは可能であることが明らかになったが、不足した酸素を補う時に酸素濃度が上昇し過ぎる傾向がみられ、今後窒素富化膜を導入することにより窒素導入操作を検討して入る。また、ガス交換時のCAセル内の圧力変動は計測値に影響を及ぼすことが分かり、この対策としてバッファの取り付け等を検討している。来年度の研究予定は、窒素富化膜の基本特性をとらえ、CA貯蔵システムを再構成する。そしてCAセル内に青果物を貯蔵し、CAセルの容積及び維持すべきCA環境と気体分離膜の性能との関係を捉え、CA貯蔵システムの設計基準及び制御アルゴリズムを確立する。次に、現行のCA貯蔵法と気体分離膜を用いた方法で貯蔵した青果物の品質を評価し、その有効性を検討する。対象とする青果物は、果実を一種類と野菜を一種類予定しており、それらの品質は酸度、糖度、クロロフィル含有量や目減り及び外観(表面色)等で評価する。
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