本研究は、脚弱の主原因とされる骨軟骨症に罹患した脚弱豚および健常豚より採取した骨の極限強さ、変形量、見かけ弾性係数、静的粘弾性パタメータ等の力学的特性を、バイオメカニクス的観点から明らかにすると共に、生体の大腿骨あるいは上腕骨間接構成体のマクロ的な動的粘弾性パラメータ等の計測を試みることにより、前記特性と比較検討を行い、従来飼養施設の現場において、生体での診断が困難であった骨軟骨症の早期発見の可能性を見出し、かつ施設構造環境の改善策を検討することを目的としている。本年度は、研究の第1段階としての間接軟骨・海綿骨複合系に対して行った押し込み試験について以下の結果を得た。 体重別豚、脚弱豚および繁殖豚の25頭について、その大腿骨と上腕骨を入手し、-7℃前後で凍結保存し供試した。試験に際しては、大腿骨遠位端内側顆より骨頭を切除すると共に、密閉したポリ袋内で常温解凍し試験片とした。試験片を万能材料試験機の基部に置かれた試作押し込み試験装置の支持台上に静置し、上方よりφ4×50mmの鋼製円筒圧子を用いて10mm/minの速度で押込み試験を行った。試験は押込みが進行し、記録紙上の荷重-変位曲線において押込み試験装置の支持台の影響が認められるまで行った。押込み試験の結果、1)生体重20〜210kg、週齢8〜90週の豚関節軟骨-海綿骨複合糸の円筒圧子の押込みに対する極限強さは2.0〜3.5kg/mm^2の値を示した。2)見掛けの強性係数は4.3〜25.9kg/mm^2の値を示し、週齢・体重の増加とともに、増加する傾向を示した。3)関節軟骨の破壊後、海綿骨に対し5mmの押込みを行うのに要するエネルギは0.09〜0.7gkg・mの値を示し、週齢に対しては供試豚の成長曲線と同様な増加傾向を示した。以上の押込み試験とともに、次年度以降に利用する超音波を利用した家畜骨関節の動的粘弾性測定装置の仕様設計を行ない、また養豚現場における豚の歩行特性の観測を行った。
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