本研究は作物体が雨を受けることによって、どのような生理的影響を受け、また障害を受けるかについて明らかにし、梅雨、多雨、酸性雨障害などに関して、基礎的資料を提供することを目的とした。 1.降雨後の葉の障害の実態の解明 降雨後に起る葉の萎凋現象、障害葉の発生、雨後の切葉の乾燥促進について、その実態を明らかにした。 2.葉の雨濡れ現象の解明 降雨による葉の障害は、雨水が葉を長時間濡らすことが原因であることを明らかにし、葉面における雨水の付着の状態を種々の植物を使って検討した。(1)葉の雨水付着量は、植物種、葉齢、降雨時間、明暗によって異なることを明らかにした。(2)葉の水滴接解角度は葉の濡れ方と関係しており、角度の大きいほど濡れやすく、角度の小さいほど濡れにくい傾向がみられた。(3)雨水付着量は葉面ワックス量と関係しており、ワックスの多いほど雨水付着量が少なくなることを明らかにした。 3.降雨による植物体の糖、窒素含量の変化の解明 植物体地上部が雨を受けることにより、糖、デンプンが著しく減少することが明らかになった。特に地上部において顕著で、無処理植物と比較して、体内成分のアンバランスが生じているものを考えられた。 4.酸性雨の観測 作物体の雨濡れ障害と関係ある雨水の酸性度について、約1年間、岡山と香川で観測を行った。岡山では平均pH4.3、香川ではpH4.6であり、酸性化が進んでおり、地域により異なっていることを明らかにした。 本研究の結果、作物体の生理的影響及び障害は、葉の雨濡れの状態、ワックスの状態、体内成分の変化が影響を与えていると考えられ、このような状態変化が降雨耐性の重要な指標であると考えられた。
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