哺乳動物の性機能の発現は季節に影響され、ラットでも光周期により性成熟開始の時期が影響されることが知られている。しかし、性成熟過程の生殖内分泌系に及ぼす光条件の影響について詳細な報告は殆どみられない。昭和63年度は出生から性成熟に至るまで連続照明、完全暗黒の条件で雌ラットを飼育し、正常照明(12時間明:12時間暗)と比較して、膣開口を指標とした性成熟が促進、遅延することを観察した。LL、DDの条件は出生後のFSHのピ-ク、卵胞の発達、性成熟の一連の現象の促進、遅延を起こした。このことから出生初期のFSHの高値が後の性成熟に重要な現象であることを確認した。平成元年度は雄ラットの性成熟(テストステロン[T]の分泌の活性化)に至る生殖内分泌系の発達を詳細に検討することを試みた。先ず、正常照明のものについて、性成熟に至る精巣、副生殖腺の発達と血中下垂体ホルモンとTおよび精漿中のT、インヒビンを測定した。精巣重量は日齢につれて増加したが、精のう腺重量は45〜50日齢にかけて急増した。この時期は血中及び精巣中のTの急激な上昇の時期と一致した。FSH値では値の変動はあるが、10-30日齢にかけて日齢に伴って増加し、30-40日齢でその価を維持し、40-43日齢に急減し、以後再び高い値を示した。FSHの急減の時期は精巣重量当りのインヒビンの増加する時期と一致し、この時期はTの分泌の開始に先行していた。LHは変動が大きいが、Tの分泌時期に特に高まるということはなく、精巣のLHに対する反応性が性成熟前に急増したものと考えられた。さらに、血中、臓器中生殖ホルモン濃度及び精巣中インヒビン活性に及ぼす実験的潜伏精巣の影響についても検討し、FSHの分泌と精巣インヒビン間のフィ-ドバック機構について確認した。
|