本研究では、家禽の連産性と特に関連の深いホルモンであるプロゲステロンの生合成に的をしぼり、実験動物としてウズラを用いて以下の研究成果を得た。 1.動的状態の元で、生体により近い観察方法を用いる目的で、ウズラ卵胞顆粒膜細胞を潅流し、プロゲステロン分泌の経時的変化を測定した。顆粒膜は排卵予定時刻の8〜10時間前のものを用い、これを潅流用チャンパーにいれて40^°Cのウォーターパス内で1分あたり0.2mlの培養液を流すことによって最大10時間までのプロゲステロン分泌を測定できるようになった。 2.この実験システムを用い、潅流液にLH、ジプチリルサイクリックAMP、等を添加し、これらの薬剤がプロゲステロン分泌を刺激できることを確かめた。またチトクロームP450の阻害剤であるアミノグルテチイミドの添加や、蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミドの添加によって、きわめて速くプロゲステロンの分泌が抑制されることも認識した。 3.これらの薬剤や阻害剤を潅流液に添加し、プロゲステロンの分泌やその材料となるコレステロールの細胞移動を測定した。その結果、プロゲステロンの生合成に対するLHの刺激部位は、コレステロールのミトコンドリアへの蓄積以前の段階と、その蓄積されたコレステロールのプロゲステロンに変換される段階の、少なくとも2つの部位があることが明らかとなった。 4.これらの結果は、家禽の産卵を誘起している最初の刺激となるLHの放出と、直接の刺激となるプロゲステロンの生合成の間には、複数の作用経路が存在し、1つが機能しない場合でも他の経路を利用している可能性を示唆している。
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