白色レグホン系コマ-シャル産卵鶏の卵巣を推定排卵時刻の16-18時間前に摘出し、体外で灌流した。灌流方法は、人工血液、ガス交換器、灌液輸送ポンプ及び卵巣チャンバ-を主体とする循環方式を用いた。プロスタグランジン(PG)と排卵との関係を追及するためPGF_<2α>及びPGE_2を灌流液に添加し排卵の有無を観察した。一方、卵胞内におけるPGの生産阻害剤であるインドメタシン及び1H-FSH各1Uずつを灌流液に添加し、排卵の有無についても同様に検討した。その結果(1)灌流液に1mg/lのPGF_<2α>を単独添加した場合、30%の卵巣において排卵が観察された。また、0.1mgの場合もほぼ同様の結果が得られた。しかし、これらの値はLH-FSHを含む対照(ビエコ-)のそれに比較して小さく、その差は有意(P<0.05)であった。(2)PGE_2を1mg及び0.1mgを灌流液に添加して排卵の有無についても検討した。その結果、両濃度とも約50%の排卵の誘起が観察された。しかし、PGF_<2α>とPGE_2との間には有意差が認められなかった。(3)次にインドメタシン(20mg/l)を灌流液に入れ、30分後LH-FSHを添加したところ、排卵が誘起された。しかし、その値は低くLH-FSH対照との間に5%レベルで有意差がみられた。一般に、PGの添加から排卵までの時間は例外を除いては約4-5時間であり、排卵しなかった最大卵胞は全て退化卵胞となった。以上、PGは本実験条件において卵巣に作用して排卵を誘起することが明らかとなった。また、LH-FSHによる誘起排卵に対してインドメタシンは排卵抑制効果が認められた。したがって、従来PGは鶏の排卵に対しての役割は認められていなかったが、本実験結果を総合すると、少なくともPGF_<2α>及びPGE_2は、鶏の排卵機構に関与していることは明らかである。しかし、その機序については不明である。
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