申請者らは、牛体外受精卵を体外培養のみで胚盤胞まで発育させ得る新しい培養系を開発した。この培養系の特徴は、体外受精卵を牛卵丘細胞と共培養することにある。しかしこの培養系でも最終的に胚盤胞まで発育する卵率は10〜20%と低い。そこで種々の要因が受精率及び発生率に及ぼす影響を調べたところ、受精のタイミングと雄牛個体の影響が大きいことが判明した。特に精子の受精能獲得の有無が大きな変動要因であり、カフェインやヘパリンを単独あるいは併用して用いて、個々の雄牛に対して至適条件をみつけだす必要性が示唆された。 次に本年度の第二の目的であった体外受精卵の移植による子牛の作出は順調に研究が進み、すでに12頭の子牛を得た。しかし未だ妊娠率が低く、また流早産率もやや高い傾向があるので、これらの原因の解明を続けている。その一つとして牛体外受精卵の染色体の異常の出現率を調べたところ、体内で発育した胚より2〜4倍程高いことがわかった。 以上の知見をもとに64年度は、染色体異常の出現率の低い培養系の開発と、牛卵丘細胞がいかにして体外受精卵の発育を促進しているか、そのメカニズムの解明も進めていく予定である。
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