羊の小腸、大腸における蛋白質、糖質および主要ミネラルの消化・吸収・利用に及ぼす繊維成分の影響を明らかにするために試験を実施した。羊の第一胃、第四胃および回腸末端にカニューレを装着し、飼料無給与で、揮発性脂肪酸、緩衝胃液、主要ミネラルを第一胃内に、カゼイン、ビタミン、微量ミネラル、コーンスターチ、セルロースを第四胃内に注入し、セルロース量を25、50、100、150g/dに変化させた条件下で、小腸内と大腸内での窒素とデンプン(α-グルコシド)の消化率ならびに血中の尿素態窒素、グルコース、リン、カルシウム、マグネシウム濃度を測定するとともに、窒素出納を調べた。結果:1)セルロース量を25g/dから150g/dに増加させると、小腸内のみかけの窒素消化率は約5%低下し、大腸内消化率は3%増加したが、全腸管消化率はいづれの処理区でも90%前後であり、処理による差は認められなかった。 2)尿中窒素排泄量は、セルロース量が増えるに伴って多くなり、また各区とも糞中窒素排泄量よりも約10倍も多かった。そのため窒素蓄積量は、セルロース量が増加すると低下する関係にあった。 3)α-グルコシドの小腸内消化率は89〜95%、大腸内消化率は4〜9%の範囲内にあり、小腸内消化率が低いと大腸内消化率が高く、全腸管消化率は98〜99%の高い値を示し、セルロース量の影響がみられなかった。 4)血中の尿素態窒素、グルコースおよび主要ミネラル濃度はセルロース量の影響を受けなかった。尿中ミネラル排泄量もセルロース量の影響を受けなかったが、糞中ミネラル排泄量は、セルロース量が増えるに従って多くなり、その結果、セルロース量が増加するとミネラル蓄積量は低下する傾向が認められた。 5)血中の遊離アミノ酸濃については現在分析中である。 6)以上の結果は注入エネルギーレベルが維持要求量の1.2倍相当量でのものであり、今後、エネルギーレベルを高めた場合での同様な試験を実施する必要がある。
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