筋漿低分子量(LMS)画分中の発色促進成分を豚筋肉から効率的に分離し、その成分を分取すると共に作用効果を明らかにすることを目的とし実験を進めた。LMS画分を調製する際に先ず豚の胸最長筋から筋漿を水で抽出するが、その際常法として行ってきたpH6.5に調整する方法が無調整よりも抽出性が良いこと、抽出時間は常法の1時間に対し1晩でも筋漿の収量に差異は無いことなどを確認した。また、LMS画分のゲルロ過を行い、LMS画分自体の最大吸収波長(248〜249nm)で溶出パターンを調べたが、溶出用緩衝液の種類によってはそのパターンが異なり、ミオグロビンと亜硝酸塩を用いた発色試験にも適する緩衝液を見出すのに多くの時間を費やした。すなわち、Veronal-酢酸緩衝液(従来から用いたが低温下で結晶が折出)とMcIlvaine緩衝液を用いた場合とで溶出パターンが異なり、さらに後者の緩衝液は嫌気的および好気的条件のいずれでもLMS画分の発色試験においてアセトンによる発色色素の抽出を阻害し、正確に発色の程度を測定することができなかった。そこで、酢酸緩衝液を用いて調べたところ、発色度の測定に何ら阻害効果を示さず低温下で成分の結晶も折出しなかった。これをLMS画分のゲルロ過に用いた場合、紫外部吸収のあまり高くない領域で発色促進効果を有するピークが明確に観察され、このパターンはニンヒドリン反応陽性物資のそれと一致した。次に有効成分分取の諸条件を見出すため、ペプチドに着目して、逆相シリカ系のカラムならびにトリフロル酢酸の水溶液とそのアセトニトリル溶液の濃度勾配溶出法により高速液体クロマトグラフィーを行った。その結果、ゲルロ過で得た発色促進領域の物質は、カラムに保持されずに溶出され、波長230nmの測定で7〜8個のピークが検出された。今後はイオン交換カラムによる分離を進め、効果の高い領域を純化し、肉製品の発色に関与する成分についてさらに検討を進めたい。
|