ニジマスの細菌内毒素に対する抵抗性を、急性期蛋白の一種であり、炎症反応の指標となるC-反応性蛋白(CRP)の産生の面から追求し、さらに、サケ科魚類の病原細菌であるVibrio anguillarumに対するニジマスの防御免疫との関連を検討した。 まず、大腸菌内毒素をニジマスに接種すると、血清中内毒素量は顕著に上昇し、しかも長期間検出されたが、魚は臨床的に全く異常を示さず、ニジマスは内毒素に強い抵抗性を示した。 次に、内毒素投与、また細菌感染後の個体レベルにおけるCRP産生を検討した。内毒素を大量に(3mg/尾)血管内接種すると、血中CRP量は1か月以上にわたり顕著に上昇した。これに対し、内毒素の腹腔内接種はCRPの一過性の上昇をもたらした。また、V.anguillarumの感染の経過とCRP産生もほぼ平行して推移した。さらに、ホルマリン不活化菌体で魚を免疫すると、死菌そのものはCRP産生を誘導しないが、アジュバントとして用いたフロインド完全アジュバントはCRP量の顕著な上昇をもたらした。 さらに、水温変化などの環境の変化もCRP産生の誘因となった。これに対し、哺乳動物でCRP産生物質として一般に知られるテルビン油(炎症誘起剤)、またカラゲーナン(マクロファージ阻害剤)は、ニジマスにおいては顕著なCRP産生をもたらさなかった。 今回の研究で、内毒素に対し抵抗性を示すニジマスで内毒素接種後持続的なCRP産生が観察されたことより、魚類の免疫予防を考える場合には、ワクチンやアジュバントの選択、またその投与法に関する詳細な検討が必要である。
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