脳心筋炎(EMC)ウイルスは豚の急性致死性心筋炎の病因で、そのキャリアとして小型げっし類が疑われている。また、本ウイルスは特定の系統のマウスに糖尿病を起こすことが知られている。本年度は4種類の小型げっし類を用いて脳心筋炎ウイルス感染症に関する基礎的検討を行ない、以下の成績を得た。 (1)EMCウイルスに体する感受性:4種類の小型げっし類のEMCウイルスに対する感受性を比較したところ、スナネズミが最も感受性が高く、ラットは全く感受性を示さなかった。また、マウス、ハムスター、スナネズミでは、ウイルスの増殖部位や病変形成部位に差が見られた。 (2)EMCウイルス感染スナネズミの急性期病態:(1)でEMCウイルスに最も感受性の高かったスナネズミを用いて、感染初期の膵臓における本ウイルスの増殖様式と病変形成の関係を明かにした。 (3)EMCウイルスは感染BALB/cマウスの全身性病態:BALB/cマウスは元来EMCウイルス性糖尿病に抵抗性であるとされているが、若齢動物(4週齢)に10^5PFU/headのEMCウイルスD株(EMC-D)を接種することによって持続性の糖尿病を惹起しえた。また、この系で、EMCウイルスによる脳病変の分布様式(海馬に主坐)と病理組織学的性状(神経細胞の壊死・脱落)が初めて明らかにされ、同時に亜急性期における膵島病変と心筋病変の特徴が示された。 (4)EMC-BによるEMC-D誘発心筋炎の防御効果:マウス膵島非障害性のB株をマウス膵島障害のD株と同時投与もしくは前投与することによって、D株誘発心筋炎の発現頻度を低下させ、かつ病変の強変を減弱させることができた。現在、その機序について検討中である。
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