血管内皮細胞は種々の循環調節因子を生産、遊離すると共に生理的物理的バリア-としても血流制御に関与している。内皮細胞の血管攣縮メカニズムを知ること企画して、電気生理学的に内皮細胞膜のイオンチャネルの選択性、動力学的特性、分布密度、コンダクタンスを明らかにする。更に、内皮細胞から二種以上の情報物質がいかなる放出メカニズムのもとにあるかを解析することにあった。アセチルコリン刺激は内皮細胞性の血管平滑筋細胞を過分極させるし、筋を弛緩させもするが、サブスタンスP、A231827等の刺激では過分極は発生しないが、これら薬物は筋を弛緩させる作用を有する。従って、候補情報物質であるニトロ化合物が平滑筋細胞を過分極させるなどうかを調べると、十分弛緩作用を呈する濃度のニトロ化合物は筋細胞を過分極させない。内皮細胞膜のイオンチャネルの種類やその特性を調べると、陽イオンを非選択的に透過させるチャネルが概ね一様に高密度に分布していることが分かった。内皮細胞は静止電位が-50mV付近にあるが、電流-電圧特性からも静止電位レベルではこの種イオンチャネルは閉口していると思われる。細胞膜が刺激物質により脱分極するとこのチャネルは活性化され、Caイオンの流入を促進する。今後、内皮細胞性情報物質の放出とチャネル活動についても解析することにより内皮細胞の反応性を明確にしたい。
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