研究概要 |
肥育豚に糸球体腎炎が多発していることを見出し、その病理発生を明らかにするため、本年度は以下の研究を行った。 1.野外豚における糸球体腎炎の発生状況 生後1週齢から2〜3歳までの繁殖豚約2,000頭の腎臓を検索し、糸球体腎炎は約1カ月齢より発生し、6カ月齢までは発生率が上昇すること、および繁殖豚では糸球体腎炎の発生率が低く、間質性腎炎が多いことが分かった。また、メサンジウムの増殖性糸球体腎炎が糸球体腎炎の大部分を占め、管内増殖性糸球体腎炎は少いことが分かった。管内増殖性糸球体腎炎はメサンジウム増殖性糸球体腎炎に何らかの感染性要因が加わった場合に発生するものと考えられた。次年度ではこれらの腎炎の免疫組織学的および超微形態学的特徴を明らかにする。 2.豚の糸球体腎炎の実験的再現 A〜R群のβ溶血性レンサ球菌(溶連菌)を子豚に扁桃内接種し、糸球体腎炎を実験的に再現するための条件を探る基礎実験を繰り返し行った。その結果、いずれの菌群においても、週1回3週間にわたり扁桃内接種し、最終接種より3週後以降に剖検した離乳豚に糸球体腎炎が認められることが分かった。現在、糸球体腎炎の起炎性を各菌群について比較する実験を行っている。本実験では、上記菌群の比較の他、実験的に再現された糸球体腎炎を自然発生糸球体腎炎と形態学的および免疫病理学的に比較し、野外で多発している豚の糸球体腎炎はβ溶血性レンサ球菌による溶連菌感染後糸球体腎炎であることを証明する。
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