研究概要 |
野外で発生してる豚の管内増殖性糸球体腎炎の病理形態像、免疫病理像およびその発生状況について検討するとともに、豚由来β溶連菌を健康子豚の扁桃に接種し、管内増殖性糸球体腎炎の実験的再現を試みた。 1.病理形態像 〓慢性広汎性に糸球体が腫大・分葉化し、糸球体細胞増数(富核)が顕著であった。超微形態学的には糸球体毛細血管内皮細胞の腫大、毛細血管内への好中球、リンパ球および大食細胞浸潤が見られた。 2.免疫病理像 主としてメサンジウム域にIgG、IgA、IgMおよびC_3の顆粒状沈着が高率に認められた。しかし、正常な糸球体例30例についても免疫病理学的に検索したところ、同様な免疫複合体の沈着が高率に認められた。従って、本腎炎に特異的な免疫複合体の沈着はないと考えられた。 3.発生状況 本糸球体腎炎は全検索例2129例中16例(0.8%)に出現し、かつ発生は約6カ月齢の肉用豚に限られていた。従って,本糸球体腎炎は一過性で、かつ可逆的変化であることがわかった。 4.実験的再現 離乳直後の雑種豚計24頭の扁桃内に、β溶血性レンサ球菌(血清型B、C、E、N、P、R、u)を1日1回1ないし6週間にわたって接種し、管内増殖性糸球体腎炎の実験的再現を試みた。実験終了後全例とも屠殺・剖検し、病理組織学的、超微形態学的および免疫病理学的に検索した。管内増殖性腎炎は1例も認められず、再現実験は不成功に終わった。
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