研究課題/領域番号 |
63560295
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
吉川 堯 北里大学, 獣医畜産学部, 教授 (80050467)
|
研究分担者 |
小山田 敏文 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (20160947)
吉川 博康 北里大学, 獣医畜産学部, 助教授 (70101516)
|
キーワード | ウシ白血病 / ウシ白血病ウイルス / 脳リンパ腫 / 海綿状脳症 |
研究概要 |
ウシ白血病はウシ白血病ウイルス(BLV)の感染による腫瘍性疾患で、全身リンパ節および心臓、腎臓、第4胃など諸臓器の肉腫性増殖を特徴とする。しかし、中枢神経系に関する知見は乏しい。本研究は病理解剖学的にウシ白血病と診断された176例(成牛型白血病163例、子牛型11例、胸腺型4例)の脳・脊髄を病理形態学的に検討したものである。 成牛型白血病163例中38例(23.3%)、子牛型11例中6例(54.5%)および胸腺型白血病4例中1例に脳実質ならびに脊髄硬膜ないし硬膜下腔に明らかな腫瘍細胞の浸潤増殖像が認められた(脳リンパ腫病像)。脳における病態には3型の間に著しい差は認められず、いずれも共通的にクモ膜下腔ないしは脳質内血管周囲のVirchow-Robin's腔の増殖を特徴とするものであった。その場合、増殖腫瘍細胞はsmall cell type(LSG分類)のリンパ球様細胞が主体で、免疫組織学的に成牛型はBリンパ球、子牛型および胸腺型はTリンパ球の性状を備えていた。 中枢神経系におけるリンパ腫の形態発生に関して、クモ膜下腔における血管壁の透過性亢進に基づく白血病細胞の浸潤性蔓延ならびに脊髄硬膜における腫瘍細胞の脳硬膜への連続性伝播の可能性が推考された。 いっぽう、成牛型11例および子牛型4例の白質に大小種々な空隙形成を特徴とするいわゆる海綿脳症像が観察された。かゝる病態は特に間脳観床域に好〓する傾向を示し、空隙はグリア細胞により包まれ、時折その中に膜様構造物や淡明な液性物質を容れていた。海綿状脳症はヒトおよび動物においては遅発性ウイルス感染と意義づけられている。病因学的には白血病ウイルスの他に未知の因子の関与が考えられている。ウシ白血病の脳に形成された海綿状脳症病態の発生に対しては、BLVの遅延的障害に加えて、脳組織における乏血性障害ならびに担腫瘍体における代謝的異常に基づくことが考察された。
|