1.Ca-Ionophore A23187 処理精子による受精条件の検討 (1) 0.1μMのCa-Ionophore A23187を用いて30〜60秒間精子を処理し、カフェインとテオフィリンの添加効果を比較した結果、カフェイン添加培地では種雄牛によって受精率に大きな差異が認められだが、テオフィリン(15mM)添加培地を使用した場合には、いずれの種雄牛精子でも80%以上の安定した受精率が得られるようになった。 (2) 媒精時の精子濃度と媒精時間を検討した結果、媒精濃度は、2〜5×10^7、媒精時間は1〜2時間が適当であることが判明した。しかし、2×10^7で受精率に大きな差異が認められ、種雄牛による差異の原因を明らかにするとともに、できるかぎり同一条件ですべての種雄牛精子に適応できる媒精方法を継続検討中である。 2.染色体標本作成条件の検討 (1) 受精卵子をTCM199を用いて8〜12時間培養し、さらに分裂阻害剤としてビンブラスチンおよびポドフィロトキシンを添加して12時間以上培養した結果、受精卵子の60%以上に精子染色体が観察された。 媒精直後の培養時間は8時間よりも12時間前後の方が高い染色体検出率が得られた。 (2) 当初、染色体検出率は媒精卵子の10%前後に過ぎなかったが、斬進固定と空気乾燥法により、現在は40%程度に向上し、その60〜70%に分析可能な染色体像を得られるようになった。しかし、染色体分析が可能になるまでの受精卵子の培養時間にはバラつきが認められ、できるかぎり一定時間に染色体標本を作成でき、染色体分析可能な卵子の割合も媒精卵子の50%以上になるように継続検討中である。
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