研究概要 |
1.全身の臓器に広く分布する乳酸脱水素酵素(LDH)は5つのアイソザイムを持ち、動物種別、臓器別に個有のアイソザイムパターンを示す。また病態に応じてその個有のパターンが変化することを確認した。従ってLDHアイソザイム分析を診断上のメインアイテムとし、必要に応じて臓器特異性の高いクレアチンキナーゼ(CK)やアミラーゼ等のアイソザイム分析を行うこととした。 2.健常牛の肝LDHアイソザイムはLDH_1:31.7%,LDH_2:24.8%,LDH_3:27.3%,LDH_4:12.8%,LDH_5:3.3%であった。水腫性変性を伴う肝病変では健常牛よりLDH_<1,2>が増加した。脂肪肝ではLDH_1の減少とLDH_2の増加が認められた。鬱血肝ではLDH_1の減少とLDH_<3,4,5>の増加が、また壊死性病変ではLDH_<1,2>の減少とLDH_<3,4,5>の増加が認められた。肝細胞の酸素欠乏による機能障害はLDHアイソザイムパターンを変化させる要因のひとつであると推察した。 3.健康なオス子牛の尿LDHアイソザイムはLDH_1:70.2%,LDH_2:21.9%であった。実験的に腎尿細管壊死を惹起させると6時間後にはLDH_<2,3>の増加が認められ、24時間後にはLDH_<2,3,4>が2倍程度にまで増加した。腎皮質、髄質LDHアイソザイムもLDH_<3,4,5>の増加が認められ、尿中パターンの変動に影響を及ぼしていた。健常牛の尿LDHアイソザイムはLDH_1:94.3%,LDH_2:4.4%であった。尿LDHアイソザイムパターン異常を認める24症例の泌尿器病変との関連性については検索中である。 4.健常牛の血清CKアイソザイムはMMが90%以上を占めた。痙攣症候群では大腿二頭筋神経線維の変性が著しく、MB、BBが明瞭なバンドとして観察された。脳脊髄液CKのBBの増加を認めた。
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