炎症性疾患牛の血清中に著増する急性相反応物質のうち、ムコ蛋白、シアル酸およびハプトグロビン(以下Hpとする)をとりあげ、種々のウシ疾患時におけるこれらの臨床応用の有用性について検討するとともに、とくにHpについて、病態生理学的意義を明確にするため、Hpを分離精製し、抗Hp血清の作製を試みた。今年度の研究成果は次の通りである。 1.健康牛および各種疾患牛の血清中のムコ蛋白、シアル酸およびHpを定量ならびにその他一般検査の炎症診断パラメーター(白血球数、白血球百分比、血清蛋白白分画比など)との比較検討; (1)健康成牛の血清中のムコ蛋白、シアル酸、Hp値の正常値をそれぞれ算出した。 (2)病牛の血清ムコ蛋白、シアル酸、Hp値、およびそれらと他の炎症診断パラメターとの相関を検討した。ムコ蛋白、シアル酸、Hpの病牛での値をそれぞれ算出したが、いずれも有意に高値を呈し、またその異常出現率はそれぞれ94.3%、45.7%、82.9%を示し、臨床応用への有用性が充分期待された。また各パラメーター間で相関性をうかがわせたものはムコ蛋白とシアル酸、シアル酸とHp、ムコ蛋白と好中球%、ムコ蛋白とα-グロブリンであった。 2.ウシ血清Hpの分離精製と抗Hp血清の作製; (1)生後3月の黒毛和種の子牛にテレピン油4.5ml/kgBWを皮下注射し、Hp陽性血清を得た。この血清から、50-70%飽和硫酸アンモニウム塩析、セファデックス-G200によるゲル濾過、Con A-Sepharoseによるアフィニティークロマトグラフィーにより、高純度のHpを分離精製した。 (2)単離Hpで家兎に免疫し、抗Hp血清を得た。出現したHp以外の成分に対する抗体は正常ウシ血清で吸収し、特異的抗ウシHp血清を作製した。 次年度はこれらを用いて、Hpの病態生理学的機能の一端を明らかにしたい。
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