研究概要 |
鶏が盲腸コクシジウム(Eimeria tenella)に濃感染すると、出血便を排出して死亡する。死因としては盲腸からの出血に加え、腸内細菌による菌血症や菌体内毒素による毒血症、本原虫が産生する毒素などが関係するとされている。感染鶏が死亡すると期待される量のE.tenellaオ-シストを投与し、菌血症、毒血症の有無、さらに急激な出血によるショックの発生の有無を調べた。 実験1:無菌鶏および普通鶏にE.tenellaの胞子形成オ-シストを経口投与し、5日後に剖検したところ、無菌鶏に比べ普通鶏の病変は重く、ヘマトクリット値(PCV)は著しく減少した。実験2:オ-シスト経口投与後4、5、および6日目の血液、脾、肝の細菌数を検査したところ少数の菌が感染群および非感染群の相方から検出され、両者間に差は認められなかった。実験3:オ-シスト投与後4、5、および6日目の鶏の血中エンドトキシン濃度をエンドトキシン比色測定法で測定したところ、15から49pg/mlの範囲で検出され、非感染群との間に有意差は認められなかった。実験4:投与後5日目の鶏の血清を健康鶏に体重100gあたり4ml静注した。静注直後に沈うつ状態がみられた以外は特別な症状は現れなかった。実験5:投与後4,5,および6日目に循環性ショックの指標としてPCV、血清蛋白量(PPC)、肉冠の毛細血管再充填時間(CRT)を測定したが、ショックに陥っているという証拠は得られなかった。鶏を、感染時のPCVとPPC値まで人為的に出血させたが、死亡は認められなかった。 結論:E.tenella感染において、鶏がこれまで言われてきた菌血症や毒血症で死亡するということは推察されず、また出血性ショックが生じているという証拠も得られなかった。従って、以上の結果からE.tenella感染により腸内細菌が腸管病変を悪化させ、続発する多量出血が鶏を死亡に導くと考えられる。
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