昨年度の胎児腹膜腔に存在する自由細胞に関する観察に引続き、本年度は胎生期をさらに遡り、マウスの胚外体腔と卵黄嚢の単核細胞を1μmメタクリレ-ト切片を用いて光顕的に観察し、さらに肝臓類洞内マクロファ-ジの電顕レベルの解析を追加した。 胎生11日以前のマウス胎児では胚内体腔である腹膜腔は卵黄嚢と羊膜によって囲まさる胚外体腔と連続している。羊膜腔や卵黄嚢腔には自由細胞は殆ど認められないが、胚外体腔には単核自由細胞が少数では有るが認められ、腹膜腔には胎生12日で食胞を有する成熟大型マクロファ-ジが出現し、胚外体腔では胎生10日で単核自由細胞が認められる。こき単核細胞は腎臓形の核と細胞表面に多数の長い突起が認められる。胞体には明調な液胞が時に認められるが、食胞を欠いている。自由細胞の細胞直径は8.4±0.9μmで核胞体比は0.5±0.2で10μm以上の細胞はわずか0.4%を占めるにすぎない。このような単核細胞は最も早期では胚外体腔に胎生9日で出現する。胎生9ー10日では肝臓造血はまだ始っていないから、この単核細胞の産生部位は肝臓以前の造血組織と関連する可能性が考えられる。胚外体腔の単核自由細胞とよく似た形態を有する単核細胞は卵黄嚢で胎生9日に認められる。卵黄血管中の単核細胞は胚外体腔と同様に腎臓形の核ならびに細胞表面に多数の突起が特徴で、細胞直径は6-9μmで胚外体腔細胞に比べると小型であり、核胞体比で1を越える単核細胞も多く含まれる。この自由細胞が胎生12日の胚外体腔や腹膜腔の成熟マクロファ-ジの形態学的に認識できる最も早期の前駆細胞とみなされる。 肝臓造血発生の胎生11日の肝臓類洞内には成熟マイクロファ-ジに加えて、食胞は欠くが細胞微細構造はマクロファ-ジとよく似た形態を有する単核細胞が観察される。この細胞は細胞計量的にも卵黄嚢単核細胞と類似する。
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