本研究の目的は網膜変性症マウス(rds)の発育とともに視物質(オプシン)の合成とその輸送がどのように変化するかを調べることであった。Westerm blotによるこれまでの実験では、rdsマウス視細胞におけるオプシンの合成は生後15日目をピークとして、徐々に減少し、20日目以降ではほとんど認められないということであった。しかし、最近になり、感度の良い免疫細胞化学法を取り入れた結果、30日目以降でも少なからず抗オプシン抗体反応を結合線毛上に観察することができた。このことはごく少量ではあるが、発育過程を通じて連続的にオプシンが合成されていることを示唆している。一方、輸送経路であるが、正常マウス(BALB/c)では内節で合成されたオプシンを外節に運ぶための多くの小胞が内節各所で認められると一般に言われている。実際に、正常マウスでは抗オプシン抗体で染色される小胞が観察され、発育とともに増加する傾向にある。しかし、変性症マウスではオプシン抗体で染まるこれらの小胞は大変少なく、また、発育とともに数の増加はみとめられない。30日目以降では他の微細構造の変化とともにその存在は不明瞭となる。 フリーズ、エッチング法で細胞骨格を観察すると正常マウスではアクチン線維、微小管とも発育とともに細胞膜直下を優占的に走るようになるが、変性症マウスではそのようなことはなく、それらの線維は乱雑に走向する。これらの構造の違いが、オプシンを含む小胞の輸送とどのような関係にあるかは今後の研究に待たなければならない。
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