本研究の材料となる網膜色素上皮(RPE)はニワトリ胚を用いることとし、まずニワトリ網膜の形態を発生学的に検索した。 1.ニワトリ網膜の発生学的研究:視細胞は孵卵8日目では、外境界膜を形成する部位に、一対の中心小体がみられるのみで、網膜下腔へ向けての内、外節の形態形成は未だ始まっていない。この時期のRPE細胞は立方体であり、頂部突起は短く、基底陥凹もみられない。F-アクチンの分布をFITC標識ファロイジンで検索すると、RPE細胞の細胞間接着部にのみ見出された。孵卵15日目になると視細胞内節が完成し、結合線毛はみられるが、外節は作られていない。アクチン細糸はRPE細胞頂部および基底部に増量している。しかし、頂部突起の内部にはメラニン顆粒、小胞体およびアクチンの芯は認められない。孵卵19日には外節もすでに出来ており、RPE細胞の頂部突起はこの外節と深く篏合している。頂部突起中には特徴的なアクチン細糸の芯構造がみられ、メラニン顆粒もこれと接して存在する。これらの事象と一致して、RPE細胞質中にも細胞内小器官の分布に変化がみられた。即ち、糸粒体の基底部への偏在、メラニン顆粒の頂部突起および頂部細胞質への偏在、滑面小胞体の増加などである。このようなRPE形態分化は視細胞の分化と時を同じくして起こっている。 2.ニワトリRPE細胞の単クローン抗体作製:RPE細胞を単離し、アジュバンドと混合し、マウス(BALB/c)の腹腔内へ投与した。数週後に脾細胞を分離し、ミエローマ細胞のとハイブリドーマを作製した。培養細胞上清を用い、RPEとの特異的反応を検索中である。 今後、RPEの形態形成過程で出現する抗原、その機能の検討を行う予定である。また、この方法論を他の動物にも応用し、RPEの機能発現にかかわる細胞膜タンパクを探す予定である。
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