走査電顕で見た抗体が、三ケの球状体の集合として見えることは既に1985年に我々が開発した超高分解能走査電顕(UHS-T1)による観察で明らかにしたが、このような形で観察し得る標本を造ることは非常に難しい。その理由が、標本作製技術のまずさにあるのか、試料自体が悪くなっていくのか、不明であった。 昭和63年度は上記の点について研究を行った。その経過は大変難行した。 まず、溶媒中にフリーで存在するIgGについては従来通り、カーボン板を用いて、乾燥法については、空気乾燥、臨界点乾燥、更には新しく我々が開発した水から直接に凍結乾燥する装置を用いての方法などを行った。又、電気泳動による方法なども加えて検討した。その結果、標本作製手技法にはほぼ満足のいく方法を確立できた。 次に金コロイド粒子に付着させたIgGについて観察を行い、IgGが金コロイド粒子の一端に付着している姿を直接観察することに成功した。特にステレオ撮影によってその形態を確認できたが、その姿はY字型でなく、紐状であり、典型的な形とはいえなかった。これが試料の不良によるものか、それとも抗体自体の物体への付着によるアンフォルディングなのかまだ明らかでない。 今後は63年度に購入した高速液体クロマトグラフを用い、新しいIgGを持ちて、典型的な形のIgGをコンスタントに見ることができるように努力したい。又、更にされと金コロイド又はフェリチンとを結合させ、組織細胞に応用して、その結合様式を明らかにしたいと計画している。
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