抗体の形態学的研究は従来、X線分析、または透過電顕による陰性染色によって行われてきた。我々は1985年、解像度0.5nmの超高分解能走査電子顕微鏡を開発し、これによって若干の生体高分子を観察することができた。その中にはIgGも含まれており、その分子が三さのサブユニットから成り立っており、それぞれがさらに二つの部分に分かれていることを明らかにした。しかしIgGの観察は標本の作製条件がむつかしく、特に市販の凍結乾燥品では、よい結果が得られ難かった。そこで、本研究費による高速液体クロマトグラフによる精製品を用い、比較的効率よく、IgGを観察できるようにした。 一方、IgMについては、同分子が電子ビ-ムによる障害を強くうけ、観察中にどんどんこわれて行き、またコントラストが非常に弱いことから、観察が困難であった。これに対しては、重金属塩溶液による染色法を開発し、ビ-ム障害を防止し、又コントラストを上げることに成功した。これにより、IgMが中央の板状体とその周囲についた5個のY字形サブユニットからなるとを観察し得た。 更に、免疫細胞学的によく用いられる金コロイドを研究し、同粒子とIgGがいかなる形で結合しているかについても明らかにした。すなわち、IgGは単独で見たときと同じように3個のサブユニットからなる形をして金粒子についている場合と、紐状に形をかえていることがあるのを認めた。更に、培養したマクロファ-ジにIgGをつけた金コロイドを作用させ、この金粒子がIgGを介して特有のレセプタ-に付着することを観察した。
|