1.肝細胞と非実質細胞(網内系細胞)の分離・精製:マウス肝をコラゲナ-ゼ潅流し、低続遠沈にて各細胞を単離した。網内系細胞(類洞内皮細胞、クッパ-細胞)は非実質細胞培養で出現するコロニ-を利用した。エストリオ-ル(E3)を与えると、類洞壁を構成する網内系細胞が増殖した。これはエストロジェン様作用を有する化合物によってのみ引き起こされる肝特異的反応であることが分かった。同時にアルファ-フェトプロティン(AFP)が出現し、アルブミン量が減少したが、これは肝細胞でAFPが産生されるようになった結果であった。2.各細胞の培養及び混合培養:肝細胞を単独培養すると10日頃には殆ど消失し、他の細胞と混合培養(同数)しても同じであったが、腹腔細胞をコ-トしておくと非常に生存が良く、6日目にかなりの数の肝細胞分裂が観察された。このことは肝以外の細胞成分もその生存、増殖に適した環境となり得ることを示すものであり、肝細胞移植に重要な示唆を与えた。3.生体への肝細胞移植:肝細胞移植では陽間膜内でのみ肝再生が起こった。移植4日目に類洞様血管が形成され、10日目には正常肝と変わらない組織となり、電顕的にも類洞、肝細胞索、ディッセ腔などが認められた。E3により肝再生はさらに促進された。他の部位では類洞様血管の形成が起こらなかった。肝細胞単独移植と非実質細胞との混合移植の間に肝再生に有意の差はなかった。4.培養施胞の移植:培養肝細胞および混合細胞を移植しても肝再生は起こらなかった。 本研究の結果、網内系細胞が肝細胞の増殖に直接的に関与している可能性は示されなかった。むしろ肝細胞自体が網内系細胞を制御することにより、肝細胞の生存、増殖、機能の維持などを行っていることが示唆された。エストロジェンはこの細胞間相互関係を補強する要因の一つかもしれない。
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