研究概要 |
今年度は、前年度の継続(血管鋳型標本の作成と孵化後1日雛の血管壁の構造および大動脈の組織発生)と同時に新しく上腕動脈の組織発生を詳しくしらべた。 1.血管鋳型標本の作製。 体肢の血管である上腕動脈の組織発生を調べるため、とくに精細な血管鋳型標本をつくってその変化を確認した。すなわち、ニワトリ胚のstage(st)14,15,16,18,21,24,26,28,34(孵卵54時間から8日)について、主要血管の三次元像はほぼ完全に明らかにすることができた。 2.孵化後1日雛の上腕動・静脈、前腸管膜動、静脈の壁構造に関しては、とりわけ今年度静脈に注目した。 3.大動脈の組織発生は、胸大動脈について追跡したのであるが、その成果は第94回解剖学会総会で発表した。 4.とくに今年度集中的に行った研究は、上腕動、静脈の組織発生である。上腕動脈は孵卵3.5日で独立した1本の管として認められるが、この時すでに内皮周囲に間葉細胞が付着している。この被覆細胞に筋原線維が出現するのは、st28(6日)である。この時期に、内皮に基底膜がつくられている。伴行静脈はst36(10日)に明らかとなる。この時、動脈壁の中膜は1〜2層の平滑筋細胞層からなる。st38(12日)では、内皮下の細胞層は6〜7層であり、はじめてここに弾性線維がみとめられる。その後、中膜の細胞層の数は増えないが、st42(14日)でこれらの平滑筋細胞は成熟した様相を呈する。これらの結果は、第95回解剖学会総会で発表する予定である。 5.心・血管の構成細胞を特異的に識別するモノクロ-ナル抗体の作製を今年度後期に開始した。現在まだ進行中であって、最終結果は得ていないが、十分の手応えは感じている。
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