研究概要 |
血管壁の組織発生に関しては、これまでにまとまった微細構造的研究は少ない。そこで、情報の欠如を補うために、まずニワトリ胚を用いて、主要な血管壁の細胞学的構築を系統的に透過電顕によって調べることにした。 1.血管系は発生過程において著しく流路を変える。従って、発生過程において一貫して特定部位を調べる必要がある。そこで各stageの樹脂注入鋳型標本を作製し,走査電顕によって発生の全体像を明らかにした。 2.孵化後1日雛の血管系は、一次的に完成されていると考えられる。この段階で、大動脈の4部位(近位と遠位弓部、胸および腹大動脈)、体壁・体肢の血管(上腕動・静脈)、腸管の血管(前腸管膜動・静脈)を詳細に調べ、動脈壁の構造は各部位によって、予想していたより遙かに著しい違いがあることがわかった。 3.下行大動脈に、平滑筋細胞が初めて認められたのは、stage 18(孵卵3日)であり、内皮下に基底膜様物質が出現するのは、stage 23(孵卵4日)、弾性線維が同定できたのは、stage 34(孵卵8日)であった。 4.上腕動脈が最終的な位置をとるのは、stage 34(孵卵8日)で、この壁に平滑筋細胞が見られるのは、stage 28(孵卵6日)、ほぼ同時に同皮下に基底膜が形成される。エラスチンは、stage 38(孵卵12日)まで出現しなかった。伴行静脈は、stage 36(孵卵10日)で明らかとなる。 以上の成果のうち、1と2および3は初年度と2年度にわたり、4は2年度に完成した。当初計画した前腸管膜動・静脈と下大静脈の解析は未完成であり、今後さらに継続する予定である。また、心臓および血管の壁を構成する細胞を識別するためのマ-カ-となるモノクロ-ナル抗体作製にとりかかったところである。
|