研究概要 |
硬骨魚類シロサケの下垂体から2種類の化学的に異なるゴナドトロピン(GTH I,GTH II)が単離され、一次構造およびcDNAの塩基配列が決定された。GTH IIは卵成熟・排卵に関与するホルモンであり、GTH Iは新しい物質であるが、ホルモンとしての機能はわかっていない。これらに基づき本研究では、生殖周期に伴なうGTH I、GTH II産生細胞の形態および、産生活性の動態を免疫細胞化学およびin situ hybridizationの手法を用いて検討することを目的とした。本年度は主として、電顕レベルの免疫細胞化学によりGTH I細胞、GTH II細胞の微細形態の比較検討とin situ hybridization用のプローブおよび器具類の準備をおこなった。 1.電顕免疫(金コロイド法)によるGTH I、GTH II陽性細胞の検討 GTH IおよびGTH IIの各βサブユニットの抗体を用い、アマゴ下垂体におけるGTH I、GTH II各陽性細胞の微細形態を検討した。排卵直後の下垂体では、GTH II陽性細胞の免疫反応は小果粒(200ー400nm)と大果粒(500ー2000nm)の双方に検出され、一方、GTH I陽性細胞では大果粒に相当する構造が存在せず、陽性反応は小果粒(100ー400nm)のみに観察された。また、卵黄形成期の下垂体では、排卵期に比べ両細胞とも著しく数が少ないことに加え、それらの免疫陽性果粒のサイズもともに小型化(100ー300nm)していることが確かめられた。これらの結果から、GTH I、GTH II細胞は相互に極めて類似しており、免疫染色を用いてはじめて識別可能であることが明らかになった。 2.in situ hybridization用のcDNAプローブの検討 GTH Iα、GTH Iβ、GTH IIβの3種のcDNAを用い、^<35>Sで標識したプローブを作製した。現在、排卵期のニジマス下垂体におけるmRNAの検出を行ない、プローブの特異性、反応時間等の検討を進めている。
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