リンパ濾胞形成の機序に関する実験的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570019
• 研究機関: 日本大学
• 研究代表者: 星 素 日本大学, 医学部, 教授 (30059290)
• 研究分担者: 堀江 香恵子 日本大学, 医学部, 助手 ; 永田 英二 日本大学, 医学部, 助手 (00102525) ; 竹本 律子 日本大学, 医学部, 講師 (60059251)
• キーワード: リンパ濾胞の形成 / 濾胞形成の場 / 抗原の一次刺激 / リンパ節発生と濾胞形成 / Subsinus layerのマクロファ-ジ

研究概要

本研究の目的は、リンパ濾胞がTまたはBリンパ球を刺激しかつマクロファ-ジ(Mφ)を活性化する物質によって誘発されるとする我々の仮設を発展させることにある。
1.マウス・リンパ節辺縁洞の実質側内皮直下には、一層のMφ層が存在し、抗原刺激によりこの層のMφが活性化することが組織化学的に示された。現在、この層のMφの存在、および生後発育を電顕的に観察している。
2.正常マウス・リンパ節において、濾胞は、深皮質単位上面の表層皮質(PCOU)に存在し、周辺部の表層皮質(PCBU)には殆ど出現しない。抗原刺激によって濾胞が新生される場合、新しい濾胞はPCOUよりむしろPCBUに形成されることが多いが、PCBUでの濾胞形成誘発と抗原の胸腺依存性との間には関係がない。恐らく抗原の胸腺依存性は、濾胞形成き引き金となる段階、すなわち、TまたはBリンパ球刺激の段階、では問題となるものの、濾胞形成の機構が動き出すと、抗原の胸腺依存性とは関わりなく、濾胞形成が進行すると考えられた。
3.一次局所投与によって濾胞を誘発する抗原を二次的に局所投与した場合には、一次投与の場合よりも効果的に濾胞形成を誘発することが示された。しかし、静注あるいは腹腔注などで全身的免疫応答を行った抗原を二次的に局所投与した場合の濾胞形成と、一次的局所投与後の濾胞形成との間には有意差はなかった。一次刺激、二次刺激の濾胞形成についてはなお検討が必要である。
4.マウス・膝窩リンパ節において、抗原投与に対する反応性(濾胞形成)は、生後1週で認められることを前年度観察したが、今年度は、この反応性の発生が生後0日から1週までのどの時期に行なわれるかを検討した。その結果、T細胞ミトゲンに対する反応性(濾胞形成)は、生後3日頃から発現することが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] H.Hoshi,H.Nagata and K.Horie: "Induction of lymph follicle formation with endotoxin lipopolysaccharide in the sraining lymph node of athymic nude mice." Pathol.Res.Pract.184. 60-68 (1989)
• [文献書誌] H.Hoshi,K.Horie,H.Nagata and M.Sato: "A histological and experimental study on the fate of an increased number of lymph follicles produced in the mouse poploteal lymph node by exogenous antigen stimulation." Arch.Histol.Cytol.52. 485-491 (1989)
• [文献書誌] 村上行隆,永田英二,星素: "ラット膝窩リンパ節の生後発育におよぼす輸入リンパ管切断の影響" 解剖学雑誌. 64. 550-560 (1989)
• [文献書誌] H.Hoshi,H.Nagata and K.Horie: "Induction of lymph follicle formation with various antigens and mitogens in the draining lymph node of athymic nude mice."
• [文献書誌] H.H.Ahn,H.Hoshi,K.Horie and H,Nagata: "The sites of lymph follicle formation in the draining lymph nodes of mice locally injected with antigenic and mitogenic substances."
• [文献書誌] 星素ほか: "マウス胸窩リンパ節における抗原誘発性リンパ濾胞形状におよぼすX線照射の影響"