研究概要 |
哺乳類およびそれ以下の脊椎動物の脳表面血管あるいは脳実質内細血管の各種ペプチド様免疫活性神経(以後ペプチド神経と略)支配に関する研究は殆ど見られないので、抗血清[substance P(SP),neurokininA(NKA),calcitonin geneーrelated peptide(CGRP),vasoactive intestinal polypeptide(VIP)およびneuropeptide Y(NPY)]を用い、各種ペプチド神経の分布様相を比較した。 哺乳類では、各種ペプチド線維は、脳底動脈系に較べて脳頚動脈系でかなり蜜に分布するが、特に、NPY及びVIP線維はSPおよびCGRP線維に較べて密であった。鳥類では、各種ペプチド線維は、哺乳類同様、脳底動脈系より脳頚動脈系で蜜の分布するが、脳底動脈系のNKAおよびNPY線維は殆ど認めることが出来なかった。爬虫類では、SP、NKA、CGRPおよびVIP線維は密に分布するが、NPY線維のみは両系ともに殆ど認めることが出来なかった。両生類では、SPおよびNKA線維は両系ともに密ではなく、CGRP線維は両者よりさらに少なくなり、VIP線維は殆ど認めることが出来なかった。 脳実質内では、VIPは哺乳類および鳥類の、NPYは爬虫類の、CGRPは鳥類の実質内神経細胞で陽性に認められた。これは、自立神経系同様、脳実質内神経細胞起始のペプチド線維が実質内細胞血管を支配する可能性を示唆しているように思われる。また、SP、NKA、VIPおよびNPY線維は哺乳類、鳥類、爬虫類および両生類のいずれかの実質内でも認められるが、特に、SPおよびNKA線維が爬虫類、NKAおよびNPY線維が両生類の実質内でよく認められた。 以上の研究の課題において起始、走行を見るための変性試験で麻酔による死亡が多い。よって、比較解剖を押し進める上で、哺乳類以下の動物の麻酔法を確立することこそ今後の重要な研究課題であると思われる。
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