末梢神経系の中で、一次感覚性神経(脊髄神経節)細胞は外部からの各種の感覚情報を、中枢神経情報としての信号に変える変換器の役割を持っている。近年、体性無髄感覚性線維の脊髄内終末は次第に明らかになってきた。今回無髄体性感覚性線維を出す神経節細胞の微細構造を明らかにし、無髄内臓性感覚線維の脊髄内投射を調べた。 47個の無髄神経節(C-線維)細胞の大きさの平均は21.8ミクロンであった。電子顕微鏡的には、標識された全てのC-線維細胞はB型細胞の特徴を示していた。末梢の感覚受容野が生理学的に同定された細胞の電子顕微鏡像は次のようであった。高域値機械的受容器および機械的寒冷受容器を持つC-線維細胞は層状をなしたERが平らな長い層板を形成し、細胞膜に平行して細胞周囲腔を満たしている。この細胞型は従来の分類に依ればB1型細胞と見なされる。ポリモーダル侵害受容器の細胞の微細構造は長短の層状をなしたERが不規則に配列し、同時にGolgi装置や多数のミトコンドリアが存在していた。この細胞は典型的なB2型細胞であった。B3型細胞の特徴は冷受容器細胞にみられた。 無髄内臓性線維の脊髄内投射はPHA-LをC-線維細胞内に注入し免疫染色した。其の結果単一神経細胞が吻尾方向にそれぞれ2-3分節分布し、其の側枝が200〜400ミクロン間隔で分岐していた。終止の見られる領域は同側の1層、2層、5層、10層と反対側の5層と10層であった。終末分枝の状態は体性感覚繊維と内蔵感覚線維とでは異なり、体性線維が脊髄2層のある領域に密に分枝を示すのに比し内臓線維は広く疎に分布していた。この終止の分布と終止様式の違いは内臓にみられる関連痛の現象を説明する一助となるものと考えられる。
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