ニワトリ胚の三叉神経の発生について、ステ-ジ19から27まで詳しく調べた。方法は石川ら(1986)に従い、ニワトリ胚を丸ごとの状態でニュ-ロフィラメント抗体(一次抗体)にて染色、次にHRP標識二次抗体で染色し発色させた。ステ-ジ19〜21の早期胚において、背側技(ramus dorsalis)眼神経(nervus ophthalmicus)から発生しCavum epipterycumに赴くのが本研究方法により初めて把えられた。この背側技はステ-ジ25でもっとも良く発達し、この時にはCavum epipterycumの背側半分に分布している。この背側技は後の眼神経硬膜技となる。又、本研究で眼神経から毛様体神経節との間に交通機ができ、これが鼻毛様体神経の最初の形態であることが判明した。この神経技はその後毛様体神経節を通過して、発達途上の眼球の脈絡裂に入り込み網状となり水晶体周辺に分布する様子が把えられた。 本研究でいまひとつ明らかになったことは、三叉神経基部の表層の外皮(ectoderm)の中とその直下に迷走を誤ったプラコ-ド細胞が把えられたことである。これはLe Douirinらのキメラ作製によるプラコ-ド細胞と三叉神経の密接な関係の論文を裏づけるところとなった。ニュ-ロフィラメント抗体でもプラコ-ド細胞が染色されるという所見は向後の研究の発展にとって有難いと思っている。上顎神経と下顎神経はステ-ジ19で上顎下顎神経叢を形成し、これから両技が分枝していく。 以上の知見は米国雑誌(American Journal of Anatomy vol.187/1 1990に掲載された。又、迷走神経の発生についても投稿中である。
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