ラットの線条体と前頭葉内側面皮質には中脳に起始するドーパミン線維が豊富に存在する。最近、われわれは正常ラットの線条体にTyrosine Hydroxylase(TH)免疫陽性中形ニューロンを見つけた。大脳皮質においてもbipolar cellなどの内在性ニューロンにTH免疫活性が観察されている。そこで、本研究では中脳腹側部を片側破壊して中脳ドーパミン線維を涸渇させた終脳でTH陽性ニューロンの変化を検討した。 成熟ラットの中脳に6OHDAまたは電気凝固法によって破壊巣を形成し、6日以上生存させた。線条体と前頭葉内側面皮質のTH陽性ニューロンは、全ラットにおいて、手術側で健常側よりも多く見られ、その活性もより強度であった。とくに、手術側の線条体のTH陽性ニューロンは、その突起の細部にまでわたって、明確に染出され、有棘樹状突起をもつことがわかった。また、線条体ニューロンのなかにはドーパ脱炭酸酵素(AADC)の免疫活性を示すものがあった。 以上より、線条体や大脳皮質のニューロンのなかには、普段カテコールアミンを含有しないが、ドーパミン入力線維が減少した場合に、カテコールアミンの産出を開始するものがあり得ると思われる。 本研究結果を土台にして、中枢ニューロンの科学的可塑応答性に関する基本的原理を探ってゆきたい。
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