研究課題
一般研究(C)
赤血球の老化現象にともなう綱内系での処理機構を明らかにするため、赤血球表面におこる構造変化ならびに赤血球の粘着力の変化を調べることを目的として本年度は以下の結果を得た。(1)赤血球の老化と赤血球集合の関係:赤血球集合は高分子血漿タンパクを介する赤血球同士の接着であり、赤血球の粘着性の示標となる。一定のずり流れの中での赤血球集合の速度は老化赤血球で著しく、速いずり流れでも若い赤血球に比べて著しい。細胞電泳動で調べた表面陰性荷電密度における差は認められず、老化赤血球においては赤血球膜表面構造の差が高分化血漿タンパクの結合力、したがって赤血球集合においては赤血球間の架橋力を増していることを示す結果であった。(2)赤血球表面構造の変化と赤血球集合の関係:次年度予定計画を推進すべく、その一部を変更した。赤血液球表面をタンパク分解酵素処理することにより赤血球集合速度は二相性の変化(集合抑制につづく著明な集合促進)を示した。これらの変化の主体は糖タンパクの一つであるグリコフォリンAにあることが明らかとなった。他の膜タンパクは赤血球集合に補助的役割を示す。すなわち、グリコフォリンAは血液の浮遊安定性を維持する上では極めて重要な役割を示し、赤血球の他の細胞との相互作用にも密接な関係をもつものと考えられた。(3)赤血膜構築実験:赤血球より作成したグリコフォリンとリン脂質を用いてガラス板上に赤血球膜モデルが構築できることがわかり、小麦胚アグルチニンを用いてグリコフォリンの存在を確認した。このガラス板上の赤血球膜に対する赤血球の粘着力を定量化する予定である。(4)赤血球分画の問題点:密度勾配遠心器(ZS)を用いて種々の条件で、赤血球分画を行っているが、パーコールを分離媒体として用いるとき、その分離は必ずしも良好でない。以上の結果を欧文2編にまとめて投稿する。
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