1.ニホンザルの運動前野と補足運動野から予期的準備活動を示すニュ-ロンを記録した結果、それらは次に行うべき運動の大きさと方向の両方に関係していたもの、大きさのみに関係していたもの、方向のみに関係していたものの3つに分類することができた。すなわち、これらの領域における予期的準備活動は、下位の運動中枢において利用することの可能な、運動のパラメ-タ-の統合された運動プログラムを提供することにより行うべき運動の準備状態の形成に寄与していることが示唆された。 2.皮質運動領野の解剖学的入出力様式を調べるため、6頭のニホンザルを用いて、一次運動野の上肢領域にHRPを、また上中心前溝の外側部にWGA-HRPを、さらに弓状溝後壁の運動前野にWGA-HRPを注入した。その結果、運動前野の弓状溝後壁と上中心前溝の外側部、それに補足運動野の上肢領域のいずれもが一次運動野の上肢領域に出力していることが明らかになった。このうち上中心前溝の外側部領域は予期的準備活動を示すニュ-ロンが最も多く記録された領域であり、この領域が運動プログラムを一次運動野に直接出力していることが考えられる。さらにこれらの領域すべてが脊髄側索を下降する皮質脊髄路細胞を含んでいることが明らかになった。またこれらの領域の入力として弓状溝後の皮質は壁頭頂葉の5野あるいは7野からの投射を受けているのに対して、上中心前溝周辺皮質は5野からのみ入力を受けている。これらの領域に共通して、前頭前野からの入力は受けていない。また、最近運動領野のひとつとみなされてきている帯状回からの入力をこれらの領域のいずれもが受けているのと同時に、これら領域が相互に結合しており、運動領野として密接に関連していることが示唆された。
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