モルモット海馬薄切標本(厚さ400μm)を用い、次の実験を行った。海馬CA1領域の錐体細胞層への入力繊維を電気刺激して、細胞外電位(集合電位)を記録し、その振巾を径時的に観察した。条件潅流液としては、グルタミン酸(0.1nM)、K^+(10-15mM)及びMg^<++>-freeの混合液を用いた。 結果:1)5分間条件液を潅流すると集合電位の振巾は徐々に増大し、潅流20分後にコントロールの約207%(14例)に達しその状態を1時間以上持続した。2)条件液潅流によるCA3の影響を除外する目的で、CA3とCA1領域の間にナイフカットを入れて条件液を潅流したが、無傷のスライスと同様の増強現象が記録された。(5例)。3)テトロドトキシン(10^<-6>M)を潅流し、集合電位が完全に消失した2分後から5分間条件液を潅流した結果、潅流20分後でも集合電位は回復しなかった。しかし、刺激強度を強めて集合電位が得られることから、國値の上昇が認められた。(2例)TTXについては、さらに検討忠である。4)PI turner阻害剤のネオマイシン(10^<-3>〜10^<-5>M)を潅流すると、10分後には集合電位はコントロールの約1/5に減少して安定になる。この状態で条件液を5分間潅流したが、集合電位の変化は認められず、条件液による増強現象は阻止された(2例)。5)non-NMDA受容体の拮抗薬である女郎蜘毒素(JSTX:10^<-7>M)を潅流して10分後に、条件液を潅流すると一過程に減少するが、条件液の潅流を終えるとコントロールまで戻り、その後変化は認められなかった(2例)。 以上の結果から、この条件液はCA1錐体細胞に直接作用し、non-NMDA受容体あるいはPI tuenoverを介して長期増強の形成されることが明らかになった。
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