研究概要 |
ω-コノトキンの受容体の通常の方法による精製は困難であることが判明したので、単クロ-ン抗体によって受容体の単離も目指した。第一にウサギ骨格筋より精製したL型Caチャンネル分子(ジヒドロピリジン受容体)に対して単クロ-ン抗体を作製して、脳の交差する分子を追究した。その結果、得られた抗体のうちの1つ(MCC-1)は、ジギトニンで可溶化したウシおよびウサギ脳のジヒドロピリジン受容体の大部分(>80%)以上を沈降させたが、同様にして可溶化したω-コノトキシン受容体を有意に沈降させなかった。したがって、ウシおよびウサギ脳のω-コノトキシン受容体はジヒドロピリジン受容体とは明らかに異なる分子であることが証明された。従来、ω-コノトキシンは神経系のLおよびN型に作用するとされて来たが、哺乳類の脳においてはL型には作用しないものと思われる。次にウシあるいはラット脳のシナプス膜分画でマウスを免疫し、ω-コノトキシン受容体(ジギトニンで可溶化したもの)を沈降させる単クロ-ン抗体を作製した。幾つかの抗体が得られているが、それらのうち2つは、イムノブロットで分子量36,000あるは28,000の成分と反応した。これら2種の抗体は、可溶化したω-コノトキシン受容体の約1/3をそれぞれ沈降させたが、両者を同時に加えても沈降する割合はわずかしか増加しなかった。したがって、これら2種の抗体は、ほとんど同一のω-コノトキシン受容体集団を認識しているものと考えられる。イムノブロットによる解析で上記の2種のタンパク質はニワトリからヒトの脳に致るまで、ほとんど同一の分子量で存在しており、末梢神経系、中枢神経系およびパラニュ-トロン系に存在して、他の部位にはほとんどないことがわかった。これらの蛋白質が、ω-コノトキシン受容体のサブニユニットか否かは現在検討中である。
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