研究概要 |
1.Aplysiaの中枢神経節内に同定された神経細胞(R12)にイノシトール三リン酸(IP_3)を微量圧注入して発生するslow outward current (IP_3-induced current)のイオン機構を解明した。この電流はK^+イオンの平衡電位、約-80mVで逆転し、イオン置換実験より、IP_3による神経細胞内貯蔵Ca^<2+>イオンの放出によりactivatされたK^+電流であることが明らかとなった。 2.R12にCa^<2+>を微量圧注入して発生するoutward currentはそのイオン機構、薬理的性質(TEAでblockされ、EGTA注入で消失)がIP_3-induced currentと一致した。 3.代表的な発癌プロモーターである4β-phorbol-12,13-dibutyrate(PDBu)を微量細胞内注入後約2〜3分でIP_3-induced currentは減少し、注入後24分でコントロールの約35%まで減少した。 4.ジアシルグリセロールのアナログ、1-oleoyl-2-acetyglycerol(OAG)を同様に神経細胞内発生するとIP_3-induced currentは上述と同様に抑制を受けた。 5.R12にCa^<2+>を微量圧注入して発生するCa^<2+>-activated K^+currentもPDBU、OAGの細胞内注入によってコントロールの約25〜30%まで減少した。 6.細胞膜を通過するとされているOAG(20nM)の潅流実験でも上記のIP_3-induced current、Ca^<2+>-activated K^+current共に抑制を受けた。 上記実験結果より発癌プロモーターはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化し、IP_3及びCa^<2+>でactivatされるK^+outward currentを抑制し、IP_3-Ca^<2+>release K^+channelのオープンに対しnegative feedbackをかけていることが明らかとなった。この効果はジアシルグリセロールのアナログ、OAGの抑制効果とも一致し、PKCの神経系における新しい生理機能を示すものであり、神経細胞内情報伝達機構に於ける重要な知見が得られた。
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