2つの実験を行い、次の結果を得た。 1.膜電位測定用シアニン系蛍光色素(RH160)の毒性と骨格筋への適用の可能性に関する実験 カエル足筋より1本の筋線維を単離し、本年度補助金にて購入した倒立顕微鏡上にセットした実験槽に固定した。RH160で染色し、単収縮に対する毒性を指標に、その濃度及び時間依存性を検討した。20μMでは、染色一分後、張力は対照の約1/2に減少し、更に時間と共に指数関数的に低下、6分後消失した。この変化は活動電位の高さと平衡していた。5μMでは、15〜20分の染色中、張力の増強(最大21%)と活動電位巾の延長を示した。1μMでは、膜電位・張力共に対照群と差がなかった。また、実験に用いた濃度のRH160は、筋小胞体に直接働き、そこからCaを遊離し筋を収縮する作用をもつカフェインによる拘縮には影響しなかった。だから、RH160は筋細胞膜に作用し、TTXと同様、Naチャネル阻害作用をもつと同時に、ある濃度では興奮時間を延長する作用をもつことを示唆している。一方、蛍光強度は20μM・5分間の染色でバックグランドの約6倍、5μMで約3倍に増加した。20秒間の励起光照射で蛍光は退色しなかった。以上の結果は、5μMRH160を用いることにより、筋に毒性を示すことなく、膜電位を光学的に追跡し得る可能性を示している。今後、膜電位と蛍光変化量との相関を解析する。 2.ETH1001を用いたCa電極の作製 Caセンサー(ETH1001)をピペットマンのチップ(1〜200μl用、先端径0.5mm)につめ作製した電極で、分離筋小胞体からのCa遊離を測定し得た。この系では27〜30mV/pCa、10μM→1mMCaに対し時定数は30msであった(発表論文参照)。ETH1001はCaセンサーとして優れた特性を示したので、現在、先端径〜1μmのガラス微小管に適用中である。
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