研究概要 |
随意運動を支配する骨格筋の収縮・弛緩はCa^<2+>貯蔵器官である筋小胞体(SR)からのCa^<2+>の細胞内への放出と取り込みによる.T管の興奮(活動電位)はSRからCa^<2+>を遊離するトリガ-である.T管膜には電位変化を感受する電位依存性Ca^<2+>チャンネル蛋白質(DHPR)が存在する.最近の研究から,DHPRのα_1サブユニットがT管からSRへの情報伝達の鍵をにぎる本体であると考えられている.本研究の目的はT管の活動電位(DHPRの活動)がSRからのCa^<2+>遊離を引き起こす仕組みを解明する事であった.ウシガエル足筋の単一筋線維を用い,2つの実験を行った.第一はスチリル基を持つシアニン系色素(RH160)がT管電位測定に応用できるか否かであった.20μM RH160で5分間筋膜を染色,高濃度K^+液で膜を脱分極し蛍光変化を調べた所,100mVの電位変化に対し,12.5%減少した.また蛍光変化はガラス電極で測定した活動電位と似た時間変化曲線を示し,変化速度も追従していた.これはRH160が骨格筋の膜電位測定に応用できることを示している.ガラス電極ではT管電位を測定できないため,今後,偏光板を用いT管電位を分離し,T管電位とCa^<2+>遊離の関係を研究したい.第二はCa^<2+>遊離をトリガ-するDHPR分子内の分子機構の解明であった.SH試薬として用いたAg^+は一過性の収縮を誘発した.これは二種のDHPで抑制された.Cd^<2+>は抑制しなかった.Ag^+は単離したDHPRへのDHP(PN200ー110)結合を強く抑えた.H_2O_2でのSH基の酸化後Agー収縮は消失,DTTで還元後再発生した.また,Agー収縮後,強縮後,強縮・K^+拘縮共に発生しなかった.以上の結果は骨格筋の収縮にT管上のCa^<2+>チャンネルが重要な役割を果している事を示す.またVoltage sensor 上のSH基はT管の活動電位変化をSR Ca^<2+>遊離チャンネルへ伝達する必須の役割を担っているのであろう.
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