本年度は、健全な視細胞を多数、高い確率で単離できる条件を探すことを目的とした。実験動物としてコイを使用し、暗赤色光照射下、眼盃標本を作成し、メンブランフィルター上に、視細胞層が上になるように網膜を単離した。大量のリンゲル液中でしばらく放置してのち、同液中で網膜を軽く振盪してガラス体をできるだけ除いた。このような網膜を予め、1〜2mlのリンゲル液を満たした小さなシャーレに移し、鋭利なピンセットを用いて、静かに何度も引き裂いた。一例を挙げれば、コイ3匹より、10^7個の視細胞が単離され、うち67%が軸索を有し、そのうちの11%(全体の7%)の細胞に、終末様ふくらみを確認できた。終末様の構造を有する細胞は7×10^5個と計算される。動物材料としてコイを使用したのは、この動物を使用すると軸索を有する標本が得易かったからである。カエルでは同様の操作によっても、軸索を有する視細胞が得られることは極めて希であった。効率良く健全な視細胞を得るには、リンゲル液中に1〜1.5mgのウシ血清アルブミンを加える必要があった。 特製のセルに装着したガラスフィルター上に、上記のようにして得られた視細胞を保持し、リンゲル液で灌流し、その液に含まれているアミノ酸を高速液体クロマトグラフにより分析した。灌流液には殆ど全てのアミノ酸が含まれており、中でもタウリンは他の5ー10倍量存在したが何れのアミノ酸も時間経過に伴って灌流液中の含量は低下した。現在のところ、光の点滅に同期して灌流液に放出されるパターンの変化するアミノ酸について、再現性のあるデータを得るに至っていない。現状ではまだガラス体が完全には除けていないのでガラスフィルターが目づまりし、視細胞をフィルター上に保持し軽く洗滌するのに約1時間を要している。この間に細胞内アミノ酸が流失している可能性も高い。そこで、迅速に灌流にとりかかることができるよう、方法を検討中である。
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