研究概要 |
1.骨格筋の細胞内Caイオン濃度を検出するためのCa指示薬のうちからantipyrylazo III(AP)を選び,これを骨格筋線維内に注入して,電気刺激を与えた後の細胞内Ca濃度を光学的に測定した。単一筋線維を3室に区切った隔絶箱内に装着し,一端の筋槽にAPを含む電解質溶液をみたし,筋線維の切断端からAPが拡散して入るよう配置する。筋線維内をAPが拡散し測定部に到達するまでには15〜20分を要する。 2.AP濃度が定常に達した後,単一電気刺激を加える時,720±20nmの波長における吸光度が一過性に減少する。これがAPによるCa信号である。Ca信号は2msecの潜伏時間の後速やかに上昇して5.5msec後に最高に達し,その後指数関数的に減少して最初の値にもどる。下降相のhalf timeは12〜16msecである(いずれも21ー24℃)。 3.第1刺激を与えた後に適当な間隔で第2刺激を与える。2刺激の間隔が10msecのとき,第2刺激に対するCa信号の振幅は50%であり,間隔が60msecのときは第2刺激のCa信号は対照値と同じ値に回復する。筋小胞体からのCa放出に一定の不応期が存在することが示唆される。 4.連続刺激を30/secの頻度で与える。連続刺激に対するCa信号の振幅と下降相のhalf timeは単一刺激に対応する値と比較して,振幅は約10%増大するにすぎず,下降相の経過もほとんど変化しない。別のCa指示薬であるarsenazo III(AZ)によるCa信号は,連続刺激によって振幅が約2倍に増大し下降相が顕著に延長する,という結果が得られている。Ca信号の解析にはどのCa指示薬を用いるかの検討が必要であることが示された。
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